第36回 ローソンのCMを作ろう! ~6年生クラス 卒業制作~
(雪道のわきで、車にチェーンをつけている先輩と、車の中で何も手伝わない後輩)
後輩「まだっスか~。やっぱ、新幹線だったんじゃないっスかね~。まずいっスよ、ホラ。どんどんぬかれていきますよ~、ぜんぜんすべる時間ないっスよ、リフトとかこんじゃいますよ~。」
先輩「うるせえなあ、少しは手伝えよ!」
後輩「すげえめんどくせえ!だから言ったじゃないっスか。やっぱ新幹線だったんじゃないっスかねぇ。」
(外に出てきた後輩が車に寄りかかると、その重みで車ががけから転落し、爆発…)
先輩「お~!マジかよ!なにすんだよ、お前…。」
これは、実際に放送されていたコマーシャルです。何のコマーシャルかわかりますか?
答えはJR東海。車のデメリットを徹底的に挙げていくことで、対比する新幹線の便利さを伝えていくー、 「比較広告」と呼ばれる技法で作られた、非常に優れたCMなのだそうです。
実際にはここに映像が入るので、私たちはこの台詞とともにその場面を目で見てイメージできるわけですが、 どうでしょう?映像がなくとも、この短いストーリーを読むと、降りしきる雪の光景や困り果てた先輩の顔、能天気な後輩の顔・・・。いろんな光景を思い浮かべることができませんか?これこそが、言葉で何かを表現することのおもしろさだと思います。
作文倶楽部の6年生は、毎年、卒業制作として「CM制作」に取り組んでいます。
制限なく原稿用紙に向かってストーリーを紡いでいく作業とはまた一味違って、決められた秒数の中で、的確にメッセージを伝えなければならないこの課題は、子ども達の違った才能を見出してくれます。音楽にこだわる子もいれば、演出にこだわる子もいて、毎年本当に楽しみな課題です。
CMを作るには、その商品・その対象のことをよく知らなければなりません。
情報を分析して、一番の売りをメッセージとして伝えなければなりません。
だから・・・、まずは取材です。今年度もお世話になるのは、教室のすぐ向かい側にあるローソン昭和清水新居店。
普段入ることのないバックヤードに入れていただき、ローソンの魅力を聞き出します。
どうしてローソンの看板は牛乳なの?他のコンビニに負けないことは何? ローソンの一押し商品は?コンビニとスーパーってどっちが便利???毎年、子ども達のどんな質問にも、納得いくまで答えてくださるのが入江オーナーです。
ファーストフードの先駆けとも言える「からあげクン」を始めたローソン。この日、新たな形に姿を変えて店頭に並ぶ新商品のから揚げがありました。商品名は「鳥から」。しょうゆ味・塩味・柚子胡椒味・こがしねぎ味。いずれも1個から買える、ローソン一押し商品です。高校生や子ども達がおやつ感覚で買っていくからあげクン。忙しい主婦層が今晩のおかずの一品に、と買っていく鳥から。「同じ唐揚げでも、買ってほしい対象が違うんです」というオーナーの言葉にみんな納得。毎週火曜日には新商品が出ること。からあげクンは1カ月に2回、新しい味が出ること。これまで知らなかった秘密をどんどんメモに書き込みながら一生懸命、お話を聞いていた6年生です。
入江オーナーへの取材は今年で5年目になりますが、一度として同じ話がありません。
「コンビニのトイレを気軽に使って下さい」とアピールし始めたのはローソンである、という話。
あの年の6年生が作ったCMは、商品アピールではなく「人に優しいコンビニ・ローソン」と打ち出しました。
からあげクンは100種類以上もあるんだと教えてもらった時には、次々に新しい商品を開発していくコンビニのパワーをCMにしました。糖質カットのおやつやおかずをいち早く取り入れた話を聞いた時には「健康志向」の時代の流れをキャッチしたローソンの新たな改革にスポットを当てました。「スーパーハイゴンドラ」という棚のお話も印象的です。スーパー並みに品数をとりそろえるために棚の高さをぐっと高くしたことを知った時、「コンビニってすごい!」とその棚を見上げたものです。
「24時間電気がついている。誰かがそこにいて、物がある。
今の時代、夜中も働いている人がいる。そんな人たちをコンビニは応援してるんだよ。
災害が多いこの国の中で、流通が途絶えてしまった時、地域の中に点在するコンビニが、食料備蓄や救助の役割を担えるようになるんじゃないか。そう思いながら仕事をしています。」
オーナーのお話を聞いて、「コンビニでバイトしてみたいな。」と子ども達。
そしてお土産にいただいたからあげくんを、とても幸せそうに食べていました。
ジョージアのCMではないですが、
“この世界は誰かの仕事でできている”
そう感じずにはいられません。
さて、今年の6年生はどんな作品を作ってくれるのでしょうか。卒業に向けてラストスパートです。
入江オーナー、ローソン昭和清水新居店の店長をはじめとするスタッフの皆さま、
今年も本当に貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!