第14回「音の言葉を楽しもう」
夏休みに、県立美術館で「童話を作ろう」というイベントが開催されました。山梨県内はもちろん、遠くは千葉からの参加者もあり、一日かけて、子どもたちは素敵な作品を仕上げてくれました。今日は、授業の中で取り組んだ「音の言葉で遊ぼう」の紹介をしたいと思います。
「雨が( )降っています。 この( )に雨の音を入れてみよう!」
まず初めにそう子どもたちに問いかけました。出てきた音は「ザーザー」と「ポツポツ」。なかなか固定概念から離れられないようです。
「もっとめちゃくちゃに、もっと自分らしくいろんな音を作ってみてごらん。」
と話すと誰かがひとこと、
「ドスンドスン!」。
みんなは爆笑。
「すっごく大きな、おもーい雨が降ってる気がするよね。」
そのあとはもう、次から次へと聞いたことのない音の言葉が飛び出しました。
しゃあしゃあしゃあ ザーザージャージャー・・・。いろんな音の組み合わせもなかなか愉快です。
その後、詩人・谷川俊太郎さん「こわれたすいどう」という詩を紹介しました。
こわれたすいどう
ピッタン テトン テッタン ピン
いくらしめてもとまらない
よるになっても
ピッタン テトン テッタン ピン こわれたすいどう
ピッタン テトン テッタン ピン
だあれもいないおふろばで
あさになっても
ピッタン テトン テッタン ピン
声に出して読むだけで、なんだか心も体もはずんできませんか?「擬音語」と呼ばれる「音」を表す言葉には、文章をより楽しく、リズムに満ちたものに変える不思議な力があります。「雨が降っている」だけではどんな雨なのかわかりません。でも、ここに「ざぁざぁ」「ぽつぽつ」「しとしと」「ざぶーん ざぁざぁ」・・・といった擬音語が入ると、小雨なのか、それとも大雨なのか、自然とイメージできるのです。
この詩を土台に、今度は子どもたちに「こわれた○○○」という詩を作ってもらいました。こわれたピアノ、こわれたせんたくき、こわれたパソコン・・・。最初は自分独自の「音の言葉」を作り出すのに四苦八苦していた子どもたちですが、みんなとおしゃべりしながら笑いあいながらいろいろな言葉を挙げていくうちに、あっという間に愉快な詩が出来上がりました。そして、その詩を今度は墨で書き上げます。豪快に書く子もいれば、音のイメージに合わせてうずまき状に書いたり、踊るような文字を書いたりする子もいます。どれもこれも本当にすばらしい。相田みつをさんの世界を思わせるような芸術作品が完成しました。
私たち大人は、雨の音は「ザーザー」、風の音は「ヒューヒュー」・・・というように、ただなんとなく、ワンパターンな擬音語を使いがちです。でも、子どもたちは、なにもない真っ白な状態で音を聞き分け、その音を言葉に変えていく才能を持っています。河原へ春をさがしに出かけたとき、ある子は「花の咲く音 シュワシュワシュワ」と書いていました。また、足音を聞きに階段へ出かけたとき「登る音と下りる音はちがう!!」と大発見した子もいました。こんな感性を、大人はいっしょに「おもしろいね!」と共感してあげたいものです。「なんだかいつも日記がワンパターンで・・・。」という時には、ぜひ擬音語から書き始めてみてください。いつもの文章ががらりと違って見えることでしょう。
秋も深まり、季節は冬に向かっています。葉っぱの舞う音、ドングリの転がる音。お休みの日は、ゆっくり散歩しながら、ぜひそれらの音に耳をかたむけてみてください。