第16回 「五感を研ぎ澄ます」

早いもので、2009年もまもなく終わろうとしています。
今年は保護者の方々のご協力のおかげで、子どもたちと一緒に教室を飛び出して授業を行う機会を多く持つことができました。そんな一コマ一コマを、振り返ってみたいと思います。
 
「春」
ぽかぽか陽気の中、県立美術館周辺の森の中で「五感」をめいっぱい使って春をさがしました。
子どもたちには、さまざまなお題が書かれた「フィールドビンゴ」のカードを渡しました。
「黄色い花」「ちくちくするもの」「まあるい形の葉っぱ」「あまいにおい」「動物のおとしもの」「風の音」・・・。よーく目を凝らさないと見つけられないもの、じっと耳を澄まさないと聞こえない音。何気なく過ごしている日常の中で、私たちは実に多くのことを見過ごしていることに改めて気づかされます。
子ども達は夢中になって、見つけたものをカードに書き込んでいきます。
「風の音はなんて聞こえた?」と尋ねると、
「しゅあ~ひゅるる~。」「さーーーさーーー。」
などなど、思い思いの擬音語が返ってきます。五感を研ぎ澄ますことから出てくる言葉は本当にすばらしい。そんな言葉がひとつ入るだけで、キラキラした命の吹き込まれた文章になるから不思議です。
午後からは小雨が降り出したのですが、雨の中のお散歩もなかなか楽しいものでした。子どもたちは葉っぱの裏に隠れている虫たちや、雨を浴びて輝くクモの巣を見つけては大はしゃぎ。「自然」はどんな時だって私たちを楽しませ、癒してくれる、そんな力を持っています。
最後に書道の筆で、この日見つけた「春」の中で一番気に入ったものをひとつずつ書いていってもらいました。なかなか味わい深い作品が仕上がりました。
 
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「夏」
心躍る夏休み。 画家の浅川洋先生と、歌人の黒沢忍先生をお招きして、文学館でアートに挑戦!絵と文のコラボレーションイベントです。いつも一生懸命書いている文章に、絵というちょっと異なる要素が合わさったとき、どんなものが生まれるのか・・・。ドキドキしながら見守りました。 ブルーシートの上に用意されたのは長さ七メートルほどもある大きな障子紙。そして子どもたちが先生から手渡されたのはテニスボール。そのテニスボールを絵の具の中に入れて色を染み込ませ、紙の上に好きなように転がします。そして出来上がったのがこの作品。 壮大なスケールで完成した子どもたちの共同作品です。
 
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そしてそのあとは、一人一枚、ビニール袋を持って、春探しに行った美術館周辺の森へ探検に出かけました。この日探すのはもちろん「夏」です。あの日からほんの数ヶ月しかたっていないのに、木々のまぶしさも、空の青さも、森のにおいも、咲いている花も・・・、すべてが違っていることに気づかされます。
松ぼっくり、変わった形の葉っぱ、鳥の羽、花びら。気に入ったものをどんどんひろって袋に集めます。そして教室でそれらを台紙に貼り付け、五感を使ってひとことひとことコメントを書いていきます。それを全部、一本のひもでつなぎ合わせて封筒の中に入れると・・・いつもとは一味違った「袋から飛び出してくる日記」の出来上がり。この日見つけた物、感じたこと、それらすべてをつめこんだ「びっくり袋」の完成です。
 
 
そして、探検の後、3分間だけじっと耳を澄まして「サウンドマップ」を作ってみました。真っ白な紙に、聞こえた音を記号化してどんどん書き込んでいきます。誰かの足音、風の音、川の音、葉っぱがゆれる音、飛行機の音・・・。真っ白だった紙が、どんどん音の記号でうまっていき「サウンドマップ」音の地図が出来上がりました。私たちは、たくさんの「音」に囲まれて生きているのです。 「夏の音」を取り入れた詩を作りました。そしてその詩を、初めに障子紙とテニスボールで作ったアートの台紙に貼り付けてみました。自信満々で夏休みの自由研究として学校に持っていった子どもたち。とっておきの夏の思い出ができました。 
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