第27回「積み木」と「言葉」のコラボレーション

今年度の課外授業は、「積み木」。
木楽舎つみ木研究所の荻野先生をお迎えして、子ども達と「積み木」という素晴らしい媒体を使って、自己を表現していくワークショップに取りくみました。
 
「何を作っていいのかわからない」
あの日、たくさんのつみきを前に、困っている子達がたくさんいました。
つんでは崩し、つんでは崩し。
 
でも、次第に子ども達の表情が変わっていきました。
「何作ってるかわからないけど、高くしたいの!」
夢中になってひたすら積み木を高く高く積み上げている子もいました。
その目には
「挑戦するんだ」「自分は変わるんだ」
という強い気持ちが満ちていて、心が震えたことを覚えています。
 
 
そんな子ども達の「気持ち」が赤いじゅうたんの上に広がっていきます。
あるお母さんが書いてくださっていました。
 
自分でも何を作ってるのかよくわらない
でも、じゅうたんの上で他の人たちの作品とつながったとき、
自分の作品もキラキラ輝いて見えた
 
そう。
自分を輝かせるのは仲間。
仲間を輝かせるのは自分。
そうやって、人と人とはつながっていく。
一人の人が誰かに出会い、またその人が誰かに出会う。
その歯車がかみあったとき
歴史は大きく動いていく。
そんな気がするのです。
 

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壮大な世界に光を入れたとき 男の子は言いました。
 
でん気にうつったピラミッド。
でん気がうごくと、かげがゆれてきれいだった。
大きなさかなを作って、でん気にうつしておよがせたい。
 
この子にとって、この場所は広くて蒼い海になったんですね。
素敵だなあと思いました。
 
 
そして、5年生の男の子の言葉です。
ものすごく照れながら、教えてくれました。
 
木の神様が
一つひとつに宿ってる
光を入れると 魔法の世界
 
木の神様。
しびれました。
 
 
そしてみんなで積み木を抱きしめてこわす。
こわすのがもったいなかった、って言ってくれた男の子の切なそうなあの表情。
 
ガラガラ~
ぼくはこわしながら
つみきにサンキュー
 
 
今の自分を一度リセットする。
切ない気持ち、不安な気持ち。
それはすべてひっくるめて・・・
次の自分に出会うための大きな希望になるんですね。
 
 
何かに取りくんだ後、大人はすぐに感想を聞きたがります。
でも本当に感動した時
本当に楽しくてたまらなかった時
人はそれだけでなんだか胸がいっぱいになって、うまく言葉にできないものなのではないでしょうか。
 
教室では春になると森へ春探しに出かけます。
空の色。葉っぱの緑。風のにおい。
体中を使って見つけた一人一人の「春」を、一人一文、描いていきます。
そしてその次に隣の友達が一文。
その次にまた隣の友達が一文。
そうして言葉が紡がれた時、みんなで共有した「春」がひとつの壮大な詩になります。
 
夕飯の食卓で、
お風呂の中で、
眠る前に。
今日の出来事・心の動きを想ったままに「三行詩」にしてみよう。
子ども達にそう伝えると、瞬く間にレスポンスが返ってきました。
それは「感想」なんていうものとはちょっと違う・・・
うまく言えないのですが、なんだかそんな感じがしました。
こうして積み木と作文教室のコラボレーションででき上がったリレーポエムが
以下の作品です。
 
 

(2年生クラス)

つんだつんだ
みんなでつんだ
気もちを合わせてみんなでつんで 心がひとつになっちゃった
プリンがたのつみ木のみで作ったけど
みんな3つの形を使って作っていた
すごいなー! 
わくわくどきどきたのしい
つみきのせかい
なんども作って、なんどもくずれてくやしかった
カタカタ…トン!ほいくえんのかべがこわれちゃった
あーあ やりなおし…
また 作ろっと!!
1人より たくさんの方が楽しいつみ木広ば
トン、トンってつんでいくと何でもつくれちゃう
木のにおいがして、つみ木って小さいなあって思って、
ライトを入れた時、天井にうつったたくさんのキラキラを見たのが楽しかった
でん気にうつったピラミッド
でん気がうごくと、かげがゆれてきれいだった
大きなさかなを作って、でん気にうつしておよがせたい
きょうはたのしかったな
またいきたいな

 

(3年生クラス)

ザラザラ足にかかったひんやりつみき いいにおい
作ってこわすのがもったいないタワーのつみき
キラキラ光っていた
四角 三角 長四角
形は3つ
つくれるものは無限大
無限のアイディアから広がった世界 
灯りで照らした積み木街
わぁ〜っと みんなの心がつながった
そぉーっと そっと 高く積んで
コン ポン ポロロン 歌声聞こえる森の宮殿
お姫様が今舞い降りる
最初は小さなかけらのつみ木
つみ上げられて、ならべられ
最後は みんなの心で ひとつになった
ガラガラ~
ぼくはこわしながら
つみきにサンキュー
「つみきさん ありがとう」
ガラガラ バッシャーン
今度はつみきさんたちを 私のお家に変身させちゃうぞ
何度も作って、何度もくずれてくやしかったけれど、
みんなの力が集まって大きな街になったとき、
一つのつみきが進化して
大きなかたちになるんだね

 

(4年生クラス)

 

さんかく、しかく。
いろいろなつみ木で さあつくろう
未来の甲府を
小さなものが大きなものにへんしん
空から見たよ 未来の世界
キラキラかがやくつみ木もうれしそう
ガシャン つみ木で作った橋が何回もこわれた
3種類のつみ木でいろんな形が作れるんだぁ~
スゴイ
みんなの作った形をつなげたら 大きな未来の街ができた
ツムツムと形をつくるつみきさん
おふろやふとんのようにあたたかく
いろいろな世界につれて行ってくれるつみきさん
次も一緒にどこに行く?
僕の背の
身長以上に
積みたいな
木の神さまが
一つひとつに 宿ってる
光を入れると
魔法の世界

 

 

(5年生クラス)

 

いいにおい
木のにおい
未来が見える
木のにおい
 地球の宝を 遊んで 肌で感じる
 いろんなことを想像しながら未来をつくる
つみ木 とんとん 積んでるうちに
いろんなアイデアわき出てくる
小さいものなのにすごいなあ
つみ木のやさしいにおいと温もりの中で
遊べる子どもは
とても幸せ
で遊んで、考えて、作る
ドキドキ、ワクワク、楽しいね!
小さな集まり大きくなぁれ
ゴロゴロガッシャーン
ゴロゴロガッシャーン
何度も何度も崩れてしまったけれど
完成した時は小さな積み木が
大きな世界に大変身!
 つみ木一こは小さなみらい
つみあげるたび大きくなる未来
くずれれば未来もくずれるけど
またつみあげれば ちがう未来ができる
つみ木は私のおてほんだ!

 

(6年生クラス)

 

何つくろう、思いうかばない
でも まずは1つ2つと積んでくと 
モクモクモクモクと広がって
大きな楽しい町ができたよ
いろんな物や形を作る たった3つの形
友達は 僕が思い付かなかった形を作った 
みんなの思い思いの物をつなげた
ライトアップしたら 空から街を見ているみたいだ
3つの積み木で、それぞれの、
たくさんの作品が一つになった
頭がかたくなってる。と、実感
刺激を受けて、少しはやわらかくなって、夢中になれた
つんでいった
みらいのかたちがみえてきた
きらきらと輝いていた
積み木は小さいけど
どんどん積んだり重ねたりすると
大きなものになる
空から見たよ 未来の世界
キラキラ輝く積み木も嬉しそう
無限のアイディアから広がった世界 
灯りで照らした積み木街
わぁ〜っと みんなの心が繋がった

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終わった直後の子ども達の感想は、
楽しかった、おもしろかった。
なんだか平たく薄っぺらかった気がします。
 
でも、あの素敵な体験を、
ぐるぐるぐるぐる 自分の体と心の中で回したことで生み出された言葉には
なんだかふわっと起き上がってきたような
立体感をもったような
そんな力を感じたのです。
それは、何もない赤いじゅうたんの上に
見たこともない光景が次々と現れることと、どこかつながっている気がしました。
 
内気で、恥ずかしがり屋で
なかなか人前で思いを伝えられない繊細な子ども達ですが
思いを言葉で伝えられるよう、その気持ちに耳を傾けながら
一歩一歩、焦らず、ゆっくりと、ともにがんばっていきたいと思います。
 
照れずに、茶化さずに、
この広い言葉の宇宙の中で、とっておきの言葉をつかまえつづけてほしい、
そして何よりも、人とつながることって楽しいな
生きてるってそれだけで素敵なことだな
そんなふうに子ども達が感じられる、そんな世の中にしていきたい。
そんなことを心から思っています。
荻野先生と、1万五千個のつみきたちが、子ども達の心に
「自分は変われる。変身できる!」
という大きな自信をくださいました。
本当にありがとうございました。
 
 
 
 
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2014.06.26

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