第30回 地球の宝物をさがそう~春の課外授業~

「あっ!くじら雲!」

ある夏休みに、教室の子ども達と野外へ夏さがしに出かけた帰り道。
青い青い夏空の中を、大きなくじらの形をした雲が、悠々と泳いでいるのを見つけました。
子ども達と一緒にいると、何気ない日常が、ドキドキしたものに変わる…、そんな瞬間に出会えるから不思議です。
 
慌しい毎日の中で、私達はいったいどれくらい空を見上げているでしょうか。
キラキラと宙に降り注ぐ流れ星。
一日の終わりを、ゆっくりと確かめながら沈んでいく太陽。
赤やピンクやオレンジに染まる夕焼け空。
そして、水のある惑星「地球」だけに姿をあらわす七色の虹。
 
「自然」は、どんな時にでも私達にとっておきの贈り物を届けてくれます。
きっと、子ども達の尽きることのない感受性や言葉の力も、その贈り物の一つに違いありません。
 
今年度は、そんな地球の宝物をたくさんたくさん見つけよう、ということをテーマに、
季節が変わるたびに、教室を飛び出してお日様の下で作品を書いていくことになりました。
 
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そして今回は第一弾。5月10日に、甲州市大和自然学校へ春の課外授業に出かけました。
 
甲府駅に集合し、一人一枚、切符を持って、電車で現地まで向かいます。
車で移動したほうが、断然早くて楽なのはわかっています。
でも、違うんですね。窓から見える景色の広がりが!
目の前を流れていく雄大な景色が、わくわく感を高めてくれました。
 
現地に着いてまずとりかかったのはピザ作り。
生地を練り、野菜を切る。すべての作業に子ども達自身が協力し合ってチャレンジします。
 
「自然」の中に入っていつも思うこと。
それは自然の中では、人はフラットな状態になれるということです。
勉強ができる子も、苦手な子も、人と話すのが得意な子も、そうでない子も。
みんなが同じ地点に立つことができる。自然には子ども達の心を解放し、すべてを受け入れる力があるのでしょう。
野外で活動すると、あっという間にみんなが仲良しになるし、一人一人が優しくなる。
虫が苦手で「ぎゃーーー!」と叫んでいる女の子の所に行って、さっと虫を他の所においやってやる勇敢な子。どうやって野菜を切ればいいのかアタフタしている仲間の中で「私にまかせて。」と見事な包丁さばきを見せる子。退屈そうにしている小さい子達を集めて「しりとりしよっか!」と抜群の面倒見のよさを発揮してくれる子。
一人一人に得意なことがあって、一人一人に役割がある。
それをこういった活動の中で見つけられることは、とても幸せなことだと思っています。
 
粉がサラサラで気持ちいい~!べとべとしてて気持ちわるーい!
生地がプクプクふくらんできた!うわ、ピーマンのにおいだ!もっとちっちゃく切ろう!
 
料理の過程は「五感」そのものです。
子ども達のトッピングした自信作が石釜で焼かれて・・・
とびきりおいしいピザが完成しました。
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おなかがいっぱいになったあと、いよいよ今日の作品作りに取りくみました。
みんなで一斉に目を閉じて、1分間耳を澄まします。ウグイスの鳴き声、風の音。葉っぱが重なる音。
そしてその後、「春」をさがすための「フィールドビンゴカード」を持って自然学校近くの円光院まで探険に出かけました。
タンポポやてんとう虫、そしておたまじゃくしまで!迷わずおたまじゃくしをペットボトルに詰め始める子ども達(笑)。
「次にここに来た時は、あの山の色はどうなっているのかな?」
「空の色は変わるのかな?」
そんなことを話しながら、自然学校まで帰りました。
 
そして子ども達に渡したのは「白い本」。
何も描かれていない真っ白な本です。ここに春・夏・秋・冬の課外授業でみつけた宝物の「詩」を描き、
世界に一冊の詩集を作るのです。
 
くどうなおこさん作「のはらうた」を子ども達に読み聞かせしました。
野原に生きる動物・虫・草花。何かになりきって、自然を描きます。
ペンネームは、なりきった動物で。
おたまじゃくし、春風、たんぽぽ、毛虫・・・。いろいろなものに変身した子ども達の
楽しい詩ができあがっていきました。
 
 
 
くまのめざめ     (くま くまみ・作)
 
ひさしぶり 友だち
おはよ
ひさしぶり 森
ひさしぶりだなぁ・・・
ファー ねむくてあくび
まぶしいおひさま きらきら
ようやっと 目がさめた
 
 
ぽかぽかってうれしいな  (小鳥 ぴい・作)
 
ぽかぽかってうれしいな
冬はつめたかった風も 今はあったかい
冬はかくれていた太陽も 今は顔を出している
冬は真っ白だった山も 今はきれいな緑色
そして 今 わたしの体も心もあったかい
とんでいるのも きもちいい
ぽかぽかって うれしいな
 
 
青い空の下で書く作品は、やはり格別です。
何も言わなくても夢中になってカラフルなかわいい絵を詩に添え始めてくれました。
周囲に広がる、色とりどりの景色を、真っ白な本に残したいという気持ちが自然と生まれてくれたのかな…ととても幸せな気持ちになりました。
 
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あっという間に5月も終わります。
体中で巡り行く季節を感じながら、元気いっぱい生きていってほしいと思っています。
そして、心を動かされた、その発見や感覚を教室で取りくんでいる作品にも生かしていってほしいと願っています。
 
2015.5.27

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