第40回 課外授業~秋・冬編~

2017年課外授業~秋・冬編~

イチョウ並木が美しい秋の美術館。
しかしこの日は台風接近の大雨。
大きな雨粒が窓からは見えるものの、美術館はいつものように静かさと穏やかさをまとって子ども達を迎えてくれました。

昨年度に引き続き、今年度も「アートカード」を用いて絵画や彫刻をじっくり見つめ、言葉で表現する練習をしてきました。そして「この絵の本物を絶対に見たい!」というとっておきの一枚を胸に美術館に向かいました。


五味先生、百瀬先生によるアートカードの授業です。
子ども達に大人気だった課題は「カードを使ってストーリーテリング」
伏せて山にしたカードから一枚引き、そのカードから想像した物語を発表する。
次の人も一枚めくり、前のカードに並べて物語をつなげていきます。
風景や人物の表情、季節感。引いたカードから様々な情報を読みとります。
一枚の絵から感じること、想像することが一人一人違うからこそ生まれてくる発想の違い。隣の人がとんでもないストーリーを言い出すかもしれない。
その言葉を受け取って、どうお話をつないでいくのか。
「なるほどー。」とうならせるストーリーもあれば、「なぜプロレスの話に!?」と
笑ってしまうような展開もあり。そのドキドキ感がたまらなく楽しかったようです。

 

aut.jpg



そしていよいよ鑑賞へ。
昨年に引き続き、ミレーの絵の前に静かに座り、
五味先生からその絵に込められたストーリーを教えてもらいました。
昨年の「凍えたキューピット」)に続き、穏やかで優しい表情が印象的な「ポーリーヌ・V・オノの肖像」、細やかな所まで丁寧に描かれた「眠れるお針子」、やがて恋に落ちる二人を描いた「ダフニスとクロエ」。
絵の見方はそれぞれ自由だからこそおもしろいのですが、こうやって絵に隠された秘密を聞くだけで、その絵が立体感を持ってふわっと浮き出してくるようなそんな気持ちになります。

「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でない。

日々、そう思っている私ですが、本当に関心を持った時に、ふっと教えてもらえる知識というのは自然に脳裏や心に入り込み、人を豊かにするものです。
押しつけや付け焼刃の知識ではなく、体験を通して得た知識というのは、何物にも代えがたい財産になる――。 ここに来るたびに、そう感じます。

先生から話を聞いた絵は、必ず次の教室での話題となり「あの絵のお話をお母さんに教えてあげたんだよ。「あの絵が好きになったよ。」と口々に子ども達が教えてくれます。
「知りたい」「学びたい」そんな気持ちを高めてくれるのがアートカードであり、
その気持ちをめいっぱい受け止めてくれるのが美術館という存在。
国語も、算数も、理科も、社会も。すべての学びが、こんなふうにつながっていけたならどんなに楽しいだろうといつも思います。


そして今回の大目玉は「バックヤードツアー」です。
これは昨年度、五味先生に子ども達がリクエストして叶ったものです。
学芸員の下東さんが普段は目にすることのできない資料室や収納庫などなど
美術館の裏側を案内してくださいました。

細い通路を抜け、「関係者以外立ち入り禁止」の札がある階段を上がり・・・
迷路のような館内を、ぐるぐる探検するうちに「いまどこにいるのかわからない・・・。」と困惑顔の子ども達(笑)
展示をする際に使用する、ケースや数々の資材、照明器具。
その作品を最も魅力的にみせるための展示用品の数々がずらりと並んでいました。

国内の作品はトラックで、絵画からの作品は飛行機で運ばれてきます。
繊細な絵画・美術品は温度・湿度の管理がとても重要なので、常に細心の注意を払って管理されているのだそうです。多くの人々の手によって、ここまで運ばれてきた作品の数々が大切に保管されていることを目にすることで、「作品に手を触れてはいけません。走ってはいけません」という言葉の意味が、理屈抜きにすとんと心に落ちたのではないでしょうか。

そして下東さんに「これは誰にもないしょだよ。」と乗せてもらった巨大エレベーター
トラックで搬入された作品がスムーズに収納庫や館内に運ばれるよう設置されたものです。
子ども達30名が一気に乗れてしまうという・・・圧巻のスケール。
あまりにうれしくて「お母さんにだけは言ってもいいですか?」と下東さんに聞く子ども達。
のちに先生方へお手紙を書いた際には「大きなエレベーターに乗れてうれしかったです」
の声多数。本当に貴重な体験をさせていただきました。

今回の課外授業で学んだことは「本物のすごさ」「本物の良さ」です。

百瀬先生が教室で、アートカードを掲げて
「よーく見ててね。この絵の“ 本物 ”を今から見に行くからね。」

その絵の「本物」は屏風に描かれていて、見る角度によってまったく印象が違いました。
また別の絵は、アートカードではわからなかったけれど、絵の具ではなくて貝殻の殻とのりをまぜたもので描かれていたり、実は紙ではなく布に描いていたり。カードでは決してわからない光や彩りがありました。
「これが本物の良さだよ。」
先生の言葉に納得です。

本物を見る、ということで得られること。
そしてその本物が、いかに多くの人々の努力のもとで管理され、この美術館に掲げられているかということ。今年もまた、大切なことを教えていただきました。

五味先生、百瀬先生、学芸員の下東さん。本当にありがとうございました。
 

 

2017年課外授業 冬編

 

途中、冷たい風は吹いたものの、春は確実にやってきているんだなあと思う1日でした。

今年度最後の課外授業は、山梨県鳥獣センターです。

野生鳥獣を保護することの大切さ、必要性を学ぶために設立されたこの施設。

中に入ると本物さながらの迫力ある剥製の動物たちがずらりと並んでいました。

鳥博士の窪田先生に、剥製を触らせていただき、

「もふもふしてる」「かわいい!」

と子ども達は大喜び。絶滅危機の鳥たちの話、山梨県内でよく姿を見られる鳥の話。

たくさんのことを学びました。

 

野生鳥獣を保護することの大切さ、必要性を伝えるために設立されたこの施設。

屋外には保護されてきた野生動物たちが大切に飼育されていました。

交通事故で骨折し、飛べなくなってしまった鳥や、子どもの時に親から離れて保護されてきたサルやタヌキ。けがが治るまで、ここで獣医さんたちが治療にあたりながら大切にお世話をするのだそうです。

winter.jpg

 

その後、タクシーで武田の杜へ。

武田の杜の杉村先生が子ども達の到着を待っていてくださいました。

お待ちかねのバードウォッチングです。

窪田先生・杉村先生から双眼鏡の使い方を学び、森へ出発!

まずは眼下に広がる甲府盆地を双眼鏡で一望。絶景でした。

 

森の中に入ってから何度か口を閉じて耳を澄ます時間をとりました。

気づかなかった方向から鳥の鳴き声が 聞こえてきたり、枝が風に揺れる音が聞こえたり。ジョウビタキ、シジュウカラ・ヤマガラ・カラス・コゲラ・ヒヨドリ・・・多くの種類の鳥たちが姿を見せてくれました。 派手な色の鳥が多いわけ。それは雌へのアピールなのだそうです。

 

先生のいろんなお話を聞きながら森を歩き、おなかぺこぺこになったところでお昼ご飯。

センター前のエサ台に集まってくる鳥たちをながめながら、

お昼からは「もし鳥になれたなら何をする?」というショートストーリーを書きました。 


winter2.jpg

春にはかえるのたまごやちょうちょを探し、夏には虫取りを楽しみ、

冬には大きな空を渡す鳥たちの姿を探しました。

この地球という星にともに生きている、多くの生き物たちにふれた一年間。

身の回りにあるたくさんのいのちに目を向けながら、また新しい作品を書いていってほしいと思います。

窪田先生、杉村先生。森の中の楽しさを教えてくださって、本当にありがとうございました。

コラム