第43回 「自然の中にある、いろんな色をさがそう」 

2019 課外授業のご報告

4月の終わりだというのに、桜の花が満開の大和自然学校。 新緑の木々や、不思議な色の昆虫たちにドキドキしたオオムラサキセンター。 赤やオレンジに染まった紅葉の森で挑戦したツリークライミング。

景色の美しさだけでなく、その時の風の香りやつーんとした肌寒さまでも 子ども達の記憶に残ってくれたらいいなと願いながら 今年度も課外授業に出かけました。

自然の中ではみんなフラットな状態。
包丁がうまく使える子、小さい子の面倒を見るのが上手な子、火おこしが得意な子。 なんにもない森の中で、次々に遊びを考え出す才能がある子。 年齢も性別もすべてを超えて、自分の役割や特技を自分で見つけて動けるようになるから 不思議です。

今年度、特に意識してほしかったのは「自然の中にある色」。 色鉛筆や絵の具では表現できないほどの無数の「色」の美しさを たくさん見つけることができました。

春の課外授業で行ったのは草木染。たまねぎの皮を煮てミョウバンを入れるとあざやかな黄色に。 それぞれの布に輪ゴムやビー玉を使って模様を作り、染め出しました。 「たまねぎの皮ってこんな色がでるんだ!」新たな発見でした。

毎回行った森の色さがしカード。「ネイチャーゲーム」の教材です。 同じ葉っぱを見ても、実は微妙に色が違います。リーダーと一緒に施設回りの森を歩き、人工物ではない自然の色を探しました。

次に、おなじみの白い本に制作をした「かさね色」 平安時代、十二単に代表されるように、公家には着物の表地と裏地の色を配色して楽しむという独特の文化がありました。その季節に合った色を重ねることで、季節を楽しんでいたのです。

課外授業では、子ども達が見つけた春の色を二色選んでもらい、重ねて名前を付けてもらいました。 テントウムシの赤とたんぽぽの黄色で「なかよし」(タンポポとてんとうむしが仲良くお話してそうだったから)桜のピンクと空の水色を重ねて「春風」・・・。個性豊かな楽しい作品ができあがりました。

子ども達が描くさまざまな彩りを見ながら、 山の色が変わってきたな。今日は空の色がいつもとちがうな。 忙しい毎日の中で、ふとそんな変化を楽しめる自分でありたいなと思いました。

本を読む、ということ」

「本を読む子になってほしいという気持ちの裏に『勉強ができる子になってほしい』という 気持ちがあるのであれば、多分、子どもは本を読むようにはならない。」 「本は娯楽である。」 笛吹市出身の作家、辻村深月さんの言葉です。

ともすれば親である私達は1つ1つ、すべてのものが子ども達の成長の糧になってほしいと 願いがちです。でも、その願いが強すぎて、本来楽しいものであるはずの読書やスポーツ、 物を書くこと、絵を描くこと・・・が何かの評価対象になってしまうものだとしたら、少し寂しい 気がします。

近年、私は公民館等で保護者の方向けに「読書感想文への親のかかわり方」についてのお話をさせて いただいています。来場者は、どうやったら子どもが本を好きになるのか、どうすればいい作文を書けるのかそのノウハウを知りたくて来てくださる熱心なお母さんばかりです。

トトロの保護者のみなさまにはいつもお伝えしていますが、読書感想文も意見文も、その子にしか書けない「体験談」が人の心に届く作文のキーポイントとなります。 どこかに行って自分で見たこと・聞いたこと。今、夢中になって取り組んでいること。

そして「読書感想文」に関して言えば、その体験にまつわるとっておきの1冊を選べたら、本を読むことも、その本から感じることを言葉にしていくことも、すべてが「楽しい」作業に変わります。 だって、実体験があるのなら「書くことがない」「マス目を埋められない」という苦痛から解放されるわけですから(*^-^*)

その逆パターンもありです。 「これといった体験が見当たらない」 という方は、毎年選ばれる4冊の課題図書から1番好きな一冊を選びましょう。 そしてその本を読んで「アクション」を起こすのです。 調べてもいいし、インタビューしに行ってもいいし、実際にその本に出てくる場所に行ってみても構いません。そうすると、書きたいことがあふれてきて、3枚ではおさまらなくなります。

一冊の本との出会いによって、子ども達の思考や考えがさまざまな形で変化し、最後に1つの 作品となっていく過程は、子どもはもちろん、親にとっても至福の時間です。

「夢中になってることや、好きなことがうちの子にはない」とおっしゃる方もいます。 もしそれに今気づいたのならばチャンスです。この1年は、何かにチャレンジしてそれを探してみましょう。何も習い事をしようと言っているのではありません。 昆虫が好きなのなら日曜日にはいろんな虫を探しに行きましょう。宇宙に興味を持ったなら、天体観測に行きましょう。社会が好きなら歴史巡りでもいいし、都道府県について調べても構いません。料理が好きなら毎日一品、子どもに作らせてみましょう。

1年たった時、きっと「伝えたい」「誰かに教えたい」「書きたい」ことでいっぱいになっているはず です。

一見、「勉強ができる子」につながらなさそうなこのプロセスが 実はつながっていくという事実を、私は教室を巣立っていく子ども達を見ながら痛感しています。

好奇心を持つこと。 どんなに忙しくても自分の隙間時間を楽しむ心のゆとりを持つこと。 そして「読書」も「書くこと」も、子ども達にとって最高の娯楽であってほしい。 そう願っています。

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