第8回 「春がきた!」

 

 ヒラヒラヒーラ
桜の花びらが舞っている。車の窓に、桜の花びらがたくさんついている。公園に行くと、花がキレイに色をつけていた。すると、ピーチューチューと鳥たちが、公園を学校のように楽しく遊んでいた。まるで、人のように遊んでいた。鳥の巣からは、鳥たちがえさをつかまえようと、巣を出たり入ったりしていた。ありだって、巣からたくさん出てくる。と、その時、サァーとやわらかい風がふいた。やさしい桜のかおりがした。やっぱり、自然に色がつくと、人の心がウキウキして、目の前が明るくなる。木にはみどりの葉がつき始めた。ピンクの丸い実もつき、冬とはちがう木になった。
 帰りに、スーパーに寄った。今、旬の食べ物をさがしに。パン屋には、期間限定のうぐいす豆パンやさくらあんパンなどがあった。まるで、パンの上に、その季節がのっているようだ。フルーツ売り場で、一番人がいたのはやっぱりいちご売り場だった。赤く大きないちごばかりだった。野菜売り場では、菜の花漬けやたけのこ、ふきのとうなどがあった。和菓子売り場では、ヒヤッと冷たいさくらようかんや、さくらあられがあった。スーパーは、季節によって売っているものがちがうからおもしろい。私たちのまわりでは、季節の変化がたくさんある。しっかり観察すると、季節の変わり目を見るのが楽しくなる。
 今年もまた、春が来た!
 
 先週の授業は、野外へ出かけて子ども達が大好きな「春さがし」をしました。風に舞う桜の花びらを追いかけ、お花屋さんや魚屋さんにインタビューをし、とっておきの春の到来をパチリとカメラにおさめ…。やっぱり、季節を感じるのは教室の中よりも外へ出るのが一番です。教室の中で「春といえば?」と問いかけても「さくら、チューリップ」ぐらいしか返ってきませんが、ちょっと外に出るだけで新しい発見がたくさんあるものです。
冒頭の作文は、5年生の女の子の作品です。ものの10分もかからぬうちに、一気に書き上げました。この作文のテーマは「間接的描写」。「春」という言葉を最後の最後まで使わずに、いかに「春」を表現できるかというのが大きなポイントです。
 
 山梨に来てからも、山梨に来る前も、私はこの季節になると必ずこの授業をしています。同じ「春」の到来のはずなのに、毎年ちがった「春」を子ども達が表現してくれるのです。秋の次に冬が来て、冬の次に春が来るという確かさ。四季のある日本に生まれた喜びを感じずにはいられません。
 
 今回の授業で出かけた場所は決して自然豊かな森や山ではありません。大きなマンションの前にある小さな公園です。しかし、子ども達はその公園の中で、またそこに行く道すがら、様々な発見をしています。道端に落ちている桜の花びらを見て「どこから飛んできたんだろう?きっとこの近くに桜の木がある!」と目を輝かせた子、大きな大きな木を見上げて「鳥の巣がある!」と叫んだ子、花屋の前で「わぁ、いいにおい!」とうっとりした表情をした子。森の中でなくても、ちょっとした自然が子ども達の五感を研ぎ澄ましてくれます。そして子ども達もまた、それを敏感にキャッチするのです。
何気ない日常がドキドキしたものに変わる瞬間。そんな瞬間を、今年もたくさんたくさん子ども達と一緒に味わっていきたいと思います。
 
2006.4.12

コラム