吉井 仁(ジェイホーク イングリッシュ ハウス )

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世界的視野でコミュニケーションできる地球人を育てる英語基礎運用能力養成訓練を実践されている吉井先生に伺いました。

寺子屋式少数精鋭の英語の授業の中身は?

主として音声を通しての英語教育では繰り返し練習が必修です。ジェイホークでは特に入門期(小学6年生)では1クラス7名前後として、生徒が出来る限り頻繁に講師の音声を聴いて発声する機会が持てるようにしています。
ほぼ20秒ごとに自分の番が回って来るようなサイクルで、各生徒が反応するための時間は2、3秒なので集中力が必要です。待ったなしのこの間(ま)は頭の中での日本語での翻訳を挿ませないことも狙っています。
授業は常に或る種の緊張間とスピードが維持され進行テンポも生徒には徐々に心地よいものになって行きます。
ジェイホークでは英語を話すスピードは1分間に150語程度を目標にしているので最初からこのスピードで英語の授業を実施しています。この訓練で習得したスキルは中3以上のクラスでは長文速読の原動力になります。

中学の英語教科書を1学年先行して学習されていると伺いましたが?

小学6年生クラスでは最初の3ヶ月間の発音訓練で基本的な発音が出来るようになったところで、音声のみで中1の教科書の内容を頭脳にインプットします(意味は日本語で説明)。この作業は講師が生徒の発話を聴きながら直接指導することが絶対条件です。また生徒は家庭でCDを繰り返し聴いて英文をコピーすることが必要です。教科書の英文の文法的解説は1冊を完璧に暗誦できるようになってから1ヶ月間で集中して行います。中1の教科書の朗読練による習得に要する時間は約3ヶ月20回のレッスン(約20時間)ですが、これを可能にしているのは各課を最低200回、積極的な生徒なら500回位朗読練習実践しているからです。
また、表現力養成では文科省の指導要領の垣根を取り去り、実践の使用に則した英語表現を学習します。例えば、「これは私が欲しい本です。」を表現したい時”This is a book.”と“I want the book.”を学習し、”その後直ちに”This is the book I want.”を学習するわけです。これは中学3年生の最後に学習する文構造なのですが、音声を通じて学習すれば容易に習得できることを生徒が証明しています。講師は常に言語学的見地から生徒の反応を観察しつつ臨機応変に生徒の頭脳に英語のルールをインプットしています。
英語の教科書を1年先行して使用はしていますが、実際は中1から中3の教科書の文法・構文はその都度必要に応じて教えています。中学2年生修了時には中学3年生の英語の教科書の基本文法と英文内容の理解と暗誦が終わり、中学3年時は文法的には英検準2級―2級レベルを中心の授業を実施しています。

日本映画英語教育学会の会員でいらっしゃいますが、英語教育にどんなふうに生かしているのでしょうか?

映画を英語教育に導入する第一の目的は生徒に現実の英語を体験させることです。日常生活では話ことばとしての英語を耳にする機会がほとんどない生徒にとって、映画は現実の英語(生の英語)を耳にする最適な副教材です。生徒のレベルに合わせて最適な映画を年に数本選択し利用しています。
 ジェイホークでは映画の一部を見た後で聴き取れた表現を生徒にリストアップさせています。見る時間は1回5分から7分程度。一種のゲーム感覚で実施しています。そのあと確認作業に入り、聴きとり訓練と発話訓練を行い、どうしてその様な発音になるのかなどを解説します。
日常的な英語環境造りとして家庭での映画鑑賞は努めて英語で行うように勧めています。
リスニング、特に英語のスピード、イントネーションやリズムの習得には最適な教材だと思います。そういう意味では映画を日常的にバックグランドミュージックの様に利用するのも効果は大だと思います。

今後の展望などお聞かせ下さい。

子供達の素晴らしい頭脳に如何に適切に英語回路を埋め込むかは英語教師にとっては壮大な事業です。ジェイホークを創設した当時から英語教育の基本方針は変わりません。英語を言語として教えるプロの指導者と学習者の共同作業の積み重ねで、英語の基礎運用能力は目標期間のうちに着実に養成されるべきだと考えます。中学3年生修了までに高校1年生修了までの英語(文法を中心)を駆使できるようにすることがその後のオールラウンドな英語習得への道を決定づけます。この土台があれば大人になってからも苦労せずに英語に取り組めます。高校3年生で準1級に合格するレベルに達し、その後の英語力は本人の目的がしっかりしていれば努力(練習量)に比例して伸びて行くでしょう。例えば、上記のような英語の基礎運用力を身に付けた生徒が大学入学1年後にTOEICで900得点を超える実力がつくのも不思議ではありません。現実的に可能なのです。

プロフィール

京都外国語大学外国語学部英米語学科(1973)卒 (専門:英語教授法、国際関係論)
ジェイホーク イングリッシュ ハウス設立(1976)
(英語教育・比較文化研究所) 外資系経営コンサルティング会社(IPR)勤務
米国カンサス大学大学院留学(言語学専攻1975-1976)
ミシガン州立大学大学院留学(1979)
セントマイケル大学大学院留学(1986)
YELM HIGH SCHOOL(1981 米国ワシントン州の高校)で客員特別講師
(英語・日本語・日本文化)として教鞭をとる
1990-2000『国際交換留学生派遣・受け入れ団体(AFS)』 甲府支部長として「草の根国際交流」のボランティア活動に従事 『日本映画英語教育学会』会員
東海大学甲府高校元非常勤講師
英語教育・学習コンサルタント.翻訳・通訳(日ー英)、アメリカ文化研究に従事