第19回「ほんとうの幸せを考える」

 

「サンタさんって、えんとつがなくてもくるの?ドアにかぎがかかっていてもくるの?」 
「サンタさんって、どうしてぼくのほしいものがわかるの?」 
「どうしてそんなにたくさんおくりものができるの?」 
みなさんならどう答えますか?
 
待ちに待ったクリスマス。 
年長さんのクラスでは絵本「サンタクロースのひみつ」を製作しました。さまざまな質問に、自分なりの答えを書いていくのですが、この発想が傑作なのです。 
かぎがかかっていても・・・その時だけぺったんこになってドアの隙間から入れるから大丈夫、どんなドアでも開いちゃう魔法のかぎを持っているから大丈夫、…。サンタクロースを心の底から信じて待ちわびている子ども達の言葉は どれも本当におもしろいものです。
 
この話をすると「かわいいねー。」と目を細める高校生クラス。同時に、こんな話をしてくれた子がいました。 
「こないだ、お母さんがクリスマスプレゼント何がいいか考えといてね、って言ってくれたんだけど何がほしいかすぐに思いつかなかった。今って、サンタさんにお願いしなくても、ほしいものはたいてい手に入るでしょう。いろんな物を普段から与えられすぎてて…サンタクロースは今の時代、なんだか特別な存在じゃなくなってきてるような気がする。」 
彼女のその言葉に私ははっとさせられました。 
物があふれ、情報があふれるそんな世の中に、彼女は何か感じるものがあったのでしょう。
 
小学部のテーマ学習で「しあわせってなんだろう?」という授業をしました。 
スウェーデンに、教科書として使われている「しあわせ」という絵本があります。文章は短いのですが、どれも哲学的で深い問いかけばかりです。
 
しあわせってなに つぎつぎと成功をおさめること それとも できないとあきらめていたことをやりとげることだろうか 
しあわせってなに ほしいものを すべて手にいれること それとも ほしいものを さがし求めることだろうか 
しあわせってなに 王様のように 思いのままにできることだろうか  
それとも たいせつだと思ったら勇気をだして やってみることだろうか 
しあわせってなに  人気者になること それともひとりぼっちで悲しいときにだれかが気づいて心配してくれることだろうか 
しあわせってなに なにかをやりとげること それとも なにかに取り組みはじめることだろうか 
しあわせってなに 自信をもつこと 自分をたいせつにすること そして 自分とおなじくらい  
ほかの人もたいせつにできること
 
知識、体験の数の差はあるものの、年長さんから六年生の子どもたちが一生懸命、いまの自分と向き合いながら考えてくれました。
 
やっぱり夏の太陽だよ。だって、夏の太陽は元気をくれるから。 
ふりつづいた雨のあとの太陽は、きれいな虹を見せてくれる。だから、みんなが幸せな気持ちになると思う。 
勝つこともベストをつくすことも、どっちも大事なんじゃないかな。 
サッカーの試合。野球の試合。やっぱり勝たなきゃくやしい。ベストをつくすからこそ、勝てるんだと思う。 
人気者になったら、たくさん周りに人が集まってきてくれるからうれしい! 
だけど、たくさんの人に囲まれても、本当に気を許せる親友がいなければ意味がないよ。 
王様みたいに、何でも手に入って、何でも言うこと聞いてもらえたら、毎日きっとすっごく楽しいと思う。 
そうかなあ?何でもやってもらってたらダメな人間になりそう。自分で勇気を出して何かをやってみたら、たくさんの発見に出会えそうでワクワクする。 
どんどん成功するとうれしいし、自信がつく。 
でも、できないとあきらめてたことをやり遂げたら今の自分からもっと上の自分になれるような気がするよ。
 
そして最後に、子ども達にとっての「しあわせ」を問いかけてみました。
 
にじを見たこと ぐっすりねること ともだちと思いっきり遊ぶこと よつばのクローバーをみつけたこと 
こたつでゴロゴロすること サッカーでシュートを決めたこと ママのおべんとうをたべること  
 誕生日に祝ってもらうこと あつあつのマックのポテトを食べること 
しあわせだと思えることが幸せ しあわせをみつけることが 一番しあわせ
 
何気ない日常に中にある、かけがえのない たくさんの幸せ。 
それは、目に見えるものだったり 目には見えないものだったり さまざまです。 
「サンタクロース」の存在は、そんな、私達のすぐそばにある「幸せ」に気づかせてくれるものなのではないでしょうか。 
クリスマス、という日が特別高価なプレゼントもらう日、ではなく目に見えぬサンタという存在に思いを馳せ、その存在を信じるぬくもりある時間であるとすれば・・・それはとても幸せなことだと思うのです。
 
6年生の女の子が、サンタクロースの代役を頼まれた物語を書き上げました。そのラストシーンは・・・
 
「さぁ、プレゼントを落としてくれ。プレゼントは落とせばその家に届くしくみになってるんだ。」とサンタのおじさんが無線から言った。私は、一つ一つ、思いを込めてプレゼントを落としていった。プレゼントを落とすたびに、世界中の子ども達の笑顔が思い浮かんだ・・・。
 
サンタクロースを待ちわびる幸せな時間。 
世界中の子ども達の「笑顔」に幸せをもらうサンタクロース。 
どっちもとっても素敵だな、すぐそばにある幸せを、たいせつにしたいな・・・そう心から思いました。
 
 

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