第37回「アートカード」で遊ぶ・感じる・表現する

2016年度も、一人一人が自分の心と向き合いながら、多くの作品を書き上げてきました。
想像することが楽しくて、続きを書きたくて仕方がなかった物語文。身の回りで起こっている社会問題をまっすぐ見つめて書いた意見文。青い空に向かって伸びる高い高い木に登り、五感をフルに使って書いた描写文。

それらの作品作りと並行してこの1年間、教室でじっくり取り組んだことがあります。
山梨県立美術館からお借りしている教材「アートカード」です。
(*アートカード詳細* http://naraitai.net/composition/32.html )

教室では文章を書くときに、できるだけ五感を意識して書くように子ども達にアドバイスをしています。
そのトレーニングとして、授業の冒頭で一人一枚、アートカードを引いて、
その絵からイメージする音・香り・さわった感じ、目で見えるもの・・・といったことをできるだけ具体的にイメージして、言葉にしていく練習をしました。そこで描いた「五感表現」は、その後に書いていく文章に大きな効果を与えてくれました。


ある時には、アートカードを使ってディベートも行いました。
「もしもみんなが美術館の館長先生なら…この絵を購入することに賛成か?反対か?」
一人一人がお気に入りのカードを手に、その絵画の魅力や特徴、どんな人たちに見てもらいたいのかを発表していきます。

その中で心に残るエピソードがあります。5年生の授業での出来事です。
ある2枚の富士山の絵画。山の形がすべて入った絵と、雲に覆われて山頂のみが描かれた絵。  
「どっちの富士山の絵を購入するか!?」と、子ども達自らが2枚の絵を取り上げて議論を始めました。

ある子は「富士山のすべて(山頂から裾野まで)が見える絵の方が誰もが喜ぶし、価値がある。」
「普段、富士山を見られない県外から来る人や外国人は絶対にこういう富士山の姿を見たいはず。」と主張します。
しかしその一方で「山頂の一部分しか見えないからこそ、富士山のいろいろな姿を想像できる楽しさがある。」
「富士山って、季節とか時間によっていろんな見え方するでしょ。それが楽しいんだよ!」

どちらの意見も本当にもっともで。刻一刻と変わりゆく富士山の姿を、近くで見ている山梨の子ども達だからこその考え方・感じ方だなあと感心したのでした。

こんなふうに、アートカードを毎回じっくり見つめて遊んでいくうちに、子ども達はいろんな想いや考えをそこから生み出して、こちらが提案しなくても生き生きとしたディスカッションを繰り広げていってくれました。


一年間、一緒に過ごしてきた仲間に「絵のプレゼント」を贈ったのも印象的です。
その子をイメージしながら。その子の好きなものを思い出しながら。とっておきのカードを一枚選んで相手に渡します。
山が好きな子、ピンク色が好きな子。動物が好きな子。
あれこれ悩みながら渡したカード。
渡されたカードを見て「えぇー!」と大笑いする子もいれば「おおーーっ。」と感動する子もいて、
「自分のために選んでくれた」そんな贈り物って素敵だなと思いました。


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1年間、こうやってアートカードを通して絵画や彫刻といった芸術作品に触れてきた子ども達。
さあ、いよいよ次回は山梨県立美術館に、本物を見に出かけます!

 

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